ご成婚おめでとうございます! これからの人生を共にするパートナーとの新たな一歩、胸が高鳴る想いかと存じます。
しかし、式の準備が進むにつれ、多くの新郎新婦が最初にぶつかる「大きな壁」があります。 それが、「招待客リストの作成」です。
「地元の友人はどこまで呼べば良いのか?」 「会社の上司は招待必須なのか?」 「疎遠になっている親戚はどう扱うべきか?」
考えれば考えるほど、「もし呼ばなかったことで、今後の人間関係が悪化したらどうしよう……」という不安が押し寄せてくるのではないでしょうか。 一生に一度の晴れ舞台だからこそ、会場選びやドレス選び以上に、「誰を招待するか」の判断は慎重になるものです。
私はこれまで10年以上にわたり、数多くの新郎新婦の結婚式をプランニングしてまいりました。 その中で、招待客選びに悩み、疲弊してしまうおふたりを何度も見てきました。
この記事では、多くの新郎新婦が頭を抱える「招待客の境界線」について、一般的なマナーはもちろん、先輩新郎新婦が実践した「角を立てずに人数を調整するテクニック」まで徹底解説いたします。
この記事を最後まで読み終えれば、曖昧だった基準が明確になり、「招待する人・しない人」を自信を持って決定できるようになります。 人間関係の不安を解消し、心から祝福してくれるゲストだけに囲まれた、最高の一日を準備しましょう。
招待客選びの「黄金ルール」はたった1つ

まず結論から申し上げます。 招待客選びに、万人に共通する「絶対的な正解」は存在しません。 しかし、後悔しないための「唯一の判断基準」はあります。
それは、「結婚式の翌日以降も、自腹で食事に行きたい相手かどうか」です。
かつては「家と家との結びつき」が重視され、義理やしがらみで招待客を決めることが一般的でした。 しかし、現在は「新郎新婦が本当に感謝を伝えたい人」を中心に招くスタイルが主流です。
「人数合わせ」や「義理」でリストを埋める必要はありません。 「未来も関係を継続したいか」という視点を持つことが、招待客選びの成功への第一歩です。
なぜ「未来志向」で選定すべきなのか?

「過去の付き合い」ではなく「未来の関係」で選ぶべき理由は、主に3つあります。
✅ 1. ゲスト満足度が格段に向上する
「本当に祝ってほしい人」だけが集まる空間は、会場全体の一体感や温かさが違います。 義理で呼ばれたゲストは、どうしても当日の熱量が低くなりがちです。 心から祝福してくれる人だけに囲まれた結婚式は、新郎新婦にとってもゲストにとっても、満足度の高い一日となります。
✅ 2. 予算を有効活用できる
現実的なお話をしましょう。ゲスト一人あたりにかかる費用(料理・飲物・引出物など)は、約2万円〜3万円が相場です。 今後のお付き合いが薄いであろう人に数万円を使うよりも、「本当に大切な人」への料理のグレードアップや、新生活の資金に充てる方が、有意義なお金の使い方ではないでしょうか。
✅ 3. トラブルのリスクを回避できる
疎遠な友人を無理に招待した場合、招待状の返信が遅れたり、当日のドタキャンが発生したりするリスクが高まる傾向にあります。 精神的な負担を減らすためにも、無理な招待は避けるのが賢明です。
【関係性別】誰まで呼ぶ?具体的な境界線と選定方法

では、具体的にどのような基準で線引きを行えば良いのでしょうか。 関係性別に、よくある悩みと解決策を整理しました。
1. 親族・親戚の境界線
親族に関しては、「新郎新婦だけで判断しない」ことが鉄則です。
| 関係性 | 一般的な目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 両親・兄弟姉妹 | 必須 | 家族婚でない限り招待するのが基本です。 |
| 祖父母 | 推奨 | 体調や移動距離を考慮し、無理のない範囲で。 |
| おじ・おば | 一般的 | 幼少期に関わりが深ければ招待します。 |
| いとこ | ケースバイケース | 親密度によります。「いとこ会」等の有無も影響します。 |
| はとこ・遠縁 | 基本は呼ばない | 特別に親しい場合を除き、対象外となることが多いです。 |
💡 プランナーのアドバイス
親族の招待範囲の決定権は、実質的に「親御様」にあると割り切るのがスムーズです。 親族間には「お互い様」の暗黙のルール(冠婚葬祭の付き合い)が存在します。 「従兄の結婚式には呼ばれたから、今回も呼ばないと失礼にあたる」といった事情は、親御様しか把握していません。 「親族リストは親御様に作ってもらう」くらいのスタンスで依頼すると、トラブルを未然に防げます。
2. 友人・知人の境界線
友人の選定で最も重要なのは、「グループ単位」で考えることです。
- 鉄則: 「仲良し5人グループ」のうち、3人を呼んで2人を呼ばない、といった選別は避けるべきです。
- 判断基準: グループ全員を招待するか、全員招待しないかの「0か100か」で検討しましょう。
もしグループ内で選別したい場合は?
「Aちゃんは招待したいけれど、同じグループのBちゃんは苦手……」 このような悩みは非常に多いです。 この場合、「親族中心の式にするため、友人は本当に少人数に限っている」という「建前」を用意しましょう。 特定の個人を排除したのではなく、「式のスタイル(規模)の都合」という理由にすることで、角を立てずに断ることが可能です。
「久しぶりの友人」はどうする?
数年間連絡を取っていない友人を招待するか迷った際は、招待状を送る前に「プレ招待(打診)」を行いましょう。 LINE等で「結婚式をすることになったんだけど、もし予定が合えば来てくれるかな?」と軽く連絡を入れます。 その反応が薄かったり、返信が遅かったりする場合は、無理に招待しない方がお互いのためです。
3. 職場・会社関係の境界線
職場関係は、会社の風土や慣習に大きく左右されます。
- 部署単位: 同じ部署のメンバーは全員招待する。
- 役職別: 上司と先輩のみ招待し、同僚は二次会からとする。
- 招待なし: 「職場関係は一切呼ばない」と決める。
近年増えているのは、「職場関係は一切招待しない」という選択です。 「上司を呼ぶと挨拶をお願いしなければならない」「席次でもめる」といった気苦労から解放されます。
💡 上司を招待しない場合の伝え方
「身内と親しい友人だけでアットホームに行うことになりました」と報告すれば、失礼にはあたりません。 ただし、「結婚の報告」自体は必須です。事後報告にならないよう、式の3〜4ヶ月前には直接伝えましょう。
【事例紹介】先輩新郎新婦の成功エピソード

ここで、私が担当したある新郎新婦(佐藤様ご夫妻・仮名)の事例をご紹介します。
【新郎新婦の悩み】 新婦の佐藤様は、学生時代の友人関係が広く、全員を呼ぶと予算オーバーになることに悩んでいました。 特に、高校時代のテニス部仲間(10名)をどうするか。卒業後は数名としか会っておらず、全員呼ぶべきか迷っていました。
【解決策:勇気ある「線引き」】 佐藤様は、私の提案した「黄金ルール(自腹で食事に行きたいか)」に基づき、思い切って決断しました。 テニス部仲間には正直に、 「会場の収容人数の関係で、どうしても全員を招待することが難しくなった」 と伝え、「特に今も親交が深い2名」だけを招待することにしたのです。
【結果】 最初は「仲間外れと思われないか」と心配されていましたが、事前に丁寧に事情を説明したことで、招待できなかった友人からも「結婚おめでとう!写真楽しみにしてるね」と温かいメッセージが届きました。 当日は、無理に人数を詰め込まなかったおかげで、ゲスト一人ひとりとゆっくり会話を楽しむ時間が確保でき、 「本当に大切な人たちに感謝を伝えられた、最高の一日でした」 と、涙ながらに喜んでいただけました。
この事例のように、「明確な基準」を持ち、「誠実に伝える」ことができれば、人間関係が壊れることはありません。
「呼ばない」選択をした時のリスク管理

招待客を絞り込む際に最も恐ろしいのは、招待しなかった人からの「反感」です。 しかし、適切なフォローを行えば、そのリスクは最小限に抑えられます。
1. 招待しなかった人への「事後フォロー」
招待しなかった友人に対して、何もしないのは危険です。 結婚式が終わった後に、ハガキやLINEで「結婚報告」を行いましょう。
- NG例: 「結婚式しました!幸せです!」という自慢に見える写真だけを送る。
- OK例: 「先日、親族中心でささやかな式を挙げました。本来なら〇〇ちゃんにも晴れ姿を見てほしかったのですが、会場の都合で叶わず残念です。落ち着いたらぜひ食事に行きましょう!」
このように、「招待したかった気持ち」を添えるだけで、相手の受け取り方は劇的に変わります。
2. SNS投稿のマナー
現代において最も注意すべきは、SNSです。 招待されていない友人が、Instagram等で結婚式の様子を知ることは避けられません。
- 対策: 投稿のキャプション(文章)に一言添える。
- 「こだわりの少人数ウェディングにしました」
- 「親族と親友だけの小さなパーティーを行いました」
これにより、「私が呼ばれなかったのは、私のせいではなく、式のスタイルのせいなんだ」と友人に理解してもらえます。 これだけで、無用な誤解や嫉妬を防ぐことができます。
3. 人数調整で「削る」時の優先順位
会場のキャパシティや予算の都合で、どうしても人数を減らさなければならない場合、以下の順序で検討することを推奨します。
- 会社の関係者(特に遠い部署や、付き合いの浅い同僚)
- 疎遠になっている学生時代の友人
- 遠縁の親戚(親御様の了承を得て)
「今後会う頻度が低い人」から順にリストから外していくのが、最も心理的負担の少ない方法です。
よくある質問(Q&A)

新郎新婦から頻繁に寄せられる疑問にお答えします。
Q. 異性の友人を招待しても問題ありませんか?
A. 基本的には問題ありませんが、配慮は必要です。 パートナーが了承していることが大前提です。 また、当日の配席で異性の友人が孤立しないよう、同じテーブルに話しやすい人を配置する等の工夫が必要です。 親族の中には気にされる方もいらっしゃるため、事前に「幼馴染で、家族ぐるみの付き合いがある」などと説明しておくと安心です。
Q. 「結婚式に行きたい!」と言ってくる友人を断りたい場合は?
A. 「会場」や「親族」を理由にするのがベストです。 「私も来てほしいんだけど、親族が多くて席が埋まってしまって……」 「会場が小さくて、人数制限が厳しくて……」 と、「自分たちの意思ではどうにもできない理由」を伝えることで、相手を傷つけずに断ることができます。
Q. 新郎新婦で招待客の人数差があっても良いですか?
A. 全く気にする必要はありません。 最近は、新郎側が10名、新婦側が30名といったケースも珍しくありません。 どうしても見栄えが気になる場合は、配席を工夫して空席を目立たなくしたり、新郎新婦混合のテーブルを作ったりすることで解決可能です。 無理に人数を合わせようとして、関係の浅い人を呼ぶことの方がリスクです。
まとめ:大切なのは「ふたりの意思」です
招待客リストの作成は、結婚式準備における最初にして最大の難関です。 しかし、これは「これからの人生を誰と共に歩んでいきたいか」を整理する、貴重な機会でもあります。
周囲の目や世間体、マナーももちろん大切ですが、何よりも優先すべきは「新郎新婦おふたりの気持ち」です。 「この人には感謝を伝えたい」「この人には晴れ姿を見てほしい」 そう心から思える人だけを選んでください。
無理をして呼んだ100人のゲストよりも、心から繋がっている30人のゲストとの時間の方が、間違いなく濃厚で幸せな思い出になります。
まずは今日、パートナーとコーヒーでも飲みながら、 「絶対に呼びたい人」 の名前を書き出すことから始めてみませんか?
完璧なリストを作る必要はありません。 ふたりの素直な気持ちを書き出すことが、後悔のない結婚式への第一歩です。 素敵な結婚式になることを、心よりお祈り申し上げます。


